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「鈍亀流」の由来

「鈍亀」(どんがめ)って何?
聞いたことないね。
読んで字の如く、「鈍い亀」ってこと。
ああ、何となくイメージ的にわかる気がする。

 私こと谷本誠一が高校を卒業と同時に、単身大阪のプロ棋士・高島一岐代八段に弟子入りしての修行時代のこと。
 将棋には、その人その人の個性が指し手に如実に現れるんだよね。そのことを専門用語で「棋風」と言ってます。才能豊かな若手の新進気鋭・プロの卵に比べ、指し手に派手さや華麗さがなく、いい意味では着実で地道な指し口、悪く言えば鈍く重い指し口とでも表現したらわかってくれるかな?
 そのような人を指して、大阪弁で「鈍臭い奴」(どんくさいやつ)と評していたようです。この「鈍臭い」とイメージ的な動物「亀」を掛け合わせた造語ではないかな?
 そもそも高校を卒業してからプロ棋士を目指そうと、奨励会(プロ棋士養成機関)入りすること事態が無謀なんだよね。わかっちゃいるけどやめられないってこと。ということは確信犯か?・・・・つまり、将棋を幼稚園や小学低学年で覚えた地方の天才坊やが、小学高学年から中学低学年で奨励会に入会しないと、プロの世界に入れないそうです。私が入会した今から30年近く前でさえ、中学生卒業に併せて入会するのでやや遅い方だったのです。
 しかも私が将棋を本格的に覚えたのが中学1年の時。誰も教えてくれる人がいないので、小学館の百科事典を引いて、持駒再使用ルールのことを初めて知って感動したっけ。ということはプロ棋士を志す時点で、周囲よりかなり遅れていたってわけ。それも「亀」のイメージと重なったのではないかな?
 おまけに幼少から覚えた将棋は、感性を重視した右脳啓発型の指し口です。それに比し中学生になって本で覚えた将棋は、理屈優先の左脳啓発型の指し口になってしまいがちです。それが指し手の速さにもてきめん現れるんだよね。当時から長考ばかり目立っていたなあ。そうそう、奨励会の本番対局で、序盤の一手に持ち時間1時間の全てを使い切り、たちまち1分将棋に突入ってことあったよね。・・・・バカとしか言いようがない。こんな人、奨励会の歴史上いなかったんじゃないかな?おまけに1時間考えて指したら、相手に自分の全く読んでない手を、それもパッと指されて愕然。1時間無駄にしたこともあったよね。
 師匠・高島先生の将棋教室で、先生の長男の一由岐さんから私の将棋を評して、「鈍臭いやっちゃなあ、鈍亀みたいなやっちゃ。」とよく言われたものでした。あの時のことがきのうのことのようにじーんとよみがえって来ます。
 亀だっていいとこあるよ。「うさぎとかめ」のイソップ童話しってるよね?最後はかめが勝ったよね?
 修行当時は、苦労が全て人生に染みついたって感じ・・・・。文字通り三畳一間の小汚い木造2階建てアパートの一室。みゆき荘って言ったよね。裏には近鉄電車がゴトゴト走ってたっけ。「窓を開けたら神田川」なんてもんじゃなく、窓をあけた10センチ先が隣のアパートの壁だっけ。当時の南こうせつの歌、よかったなあ。近くの銭湯に通ってました。番台に時々若い娘さんが座ってたっけ。苦しさ、悲しさを紛らわすために、一人で近くの公園で夜な夜なギターを弾いたっけ・・・・。つまり、いわゆる「真夜中のギター」ってやつ・・・・。
 そう言えば強い人の将棋は「○○流」って流派が命名されるんですよね。「光速流」と言えば谷川浩司、「自然流」と言えば中原誠、「自在流」と言えば内藤國雄とか・・・・。これがみなかっこいいんだよね。マイナー的なのはたまにあるけど・・・・。たとえば「泥沼流」の米長邦雄、「地道流」の高橋道雄、「地蔵流」の南芳一。 ただし米長九段のは、表芸が「さわやか流」であって、「裏芸」としての「泥沼」だから、ちょっとひと味もふた味も違うんだよね。もっとも最近は、「激辛流」の丸山忠久、「鉄板流」の森内俊之という風に、メジャーだかマイナーだかわからない中性的なのも出て来たよね。それだけ棋士の個性がバラエティに富んでいるのか、それとも将棋の奥がそれだけ深いのか?まっ、そんなことどうでもいいっか。
 そうだ>私の場合、マイナーの極限という意義付けで「鈍亀流」でいいんじゃない?一流棋士ではなく、奨励会くずれの青春だからね。
 ということで、サブタイトルは『三畳一間「鈍亀流」の青春』に決定。ついでにホームページ・アドレスもそれにしちゃえ。その方がみんなに覚えてもらえるし、親しみも湧いて来るんじゃないかと思ってね。